なまねこ様にミシェルを描いていただけました!!
素敵な絵をありがとうございます!!
ミシェルは、当方の創作物【Lost in Blue】 に登場する、干物のような肌質に、彼女の素顔を見た者が恐怖に慄き「バケモノ」と罵りながら逃げて行くほどに醜く蒼い人魚です。そんな容姿とにつかない、澄んだ高音域が美しい歌声をもっています。ミシェルには歌声しか取り柄がなく、歌声で他者の心を魅了している間は誰もミシェルを傷付けませんが、一度歌が終われば夢は覚め、誰もが恐れ逃げ出します。
月が明るい夜だった。星々は海に落ち、波のまにまに煌めく静かな夜だった。浜辺をゆったりした足取りで歩くのは、人形師キールド。絵本から飛びだした王子様のように整った顔立ちをした、金髪碧眼の男だ。時折過ぎ去る湿った風が、後頭部のところで青いリボンを使って纏めた長髪を、蒼いジュストコールの裾を揺らし、頬を撫でる。
「…………」
甘い香りが優しい白い花。月光を受けて蒼白く輝く其れを一輪、水面に浮かべた。ゆらり、ゆらりと波間を泳ぎ、ゆっくり、ゆらゆら沈んでいく。
「…………」
ふと、取り出した一枚の絵。
もう何前年も昔、魔物討伐を専門とするヘルシングの者が海域の調査をしていた時に見かけた人魚の絵だという。蒼の人魚は上級種と呼ばれる生まれ持って強い魔力を保有する人魚で、此の世に存在する何よりも美しい蒼をもつ所為で人間達によって乱獲され、絶滅にまで追い込まれ、とても貴重な一枚らしい。
遭遇者が書いたと思われる付属の資料には『思い出すのも恐ろしいほどに悍ましかった。きっと近くで見たら恐怖に囚われ動けなくなっただろう。少し距離があって助かった』と綴られていた。
従来ならば参考資料は厳重にヘルシングで保管されるが、当主の好意で譲り受けて今に至る。
「……ミシェル……」
愛しい名を呼びながら、片手の人差し指で頭を撫で、頬に触れる。指先に伝わる感触は無機質な物だが、手入れが行き届いていない髪の質感も、ささくれ立つほどに乾燥した皮膚の質感も、脳が鮮明に記憶しており思い出すことができた。
「……俺と過ごした時よりも、肌が瑞々しいような気がする。海の中、だからか」
風呂場で洗った時の記憶を引き出しから探し出す。水分を吸い取り瑞々しさを取り戻した肌が蒼白いのは、上級種の持つ血肉が蒼いからだという。瑞々しさをとし戻したと言っても、陸に上がった人魚が乾燥するのはあっという間で、すぐに乾物状に戻ってしまったのを思い出す。
「……腕が邪魔だな。相も変わらず臆病な奴だ。どうせ相手の方が逃げ出すのだから、堂々としていればよいものの」
肉付きの薄い胸。左右にあるエラの真ん中をなぞり、細い腰を引き寄せたくなるのを堪え、腹部へ到達した。
「此れは……」
腹部にある立に走る裂け目を開くと孔が二つある。一つは排泄に使う孔。もう一つは卵を産み落とす為の孔だ。幾らなぞったところで、絵の裂け目は開かない。
「はぁ……。何故、お前は人の姿で俺の前に現れた?」
皮膚と鱗の境界をなぞる。
「此の姿でなら、上手く可愛がれたと思う。……まったく。馬鹿な奴だよ、お前は」
漏れる溜息はどこまでも深い。
終
個人的には、スカイダイビング中に美しい歌声に気付き魅了されたモブな気分です。歌が終わった瞬間、我に返り、目の前に人魚と呼ばれる魔族が居る。目が合ったが最後。溢れ出した恐怖に絡め取られ、脳が混乱し、帰れなくなってしまう。ミシェルは優しいから、苦しまないように魅了し続け終わらせてくれるでしょう。
恒例行事の『拡大して特に好きな部分を眺める(好きな物を近くで舐めるように眺めたいという欲求からとる行動であり、拡大してまじまじ眺めることでキールドの思考と共鳴するなど、しておりません。私も近くでまじまじと観察したいだけなのです。探求心には勝てない)』という行為をしていた時に、白目がチラ見えしている事に気付いたんですね。ゾッとしました。薄暗い雰囲気の中でアオが目を奪い、水中で揺らぐ長髪はリボンのようで、光の加減で色味が変わる鱗が美しいのに、揺らぐ前髪からチラッと覗く白目を認識した瞬間に身が引き締まるんです。確実に相手も此方を認識していると意識したことで沸き上がる危機感、とでも言いますか……ああ、ミシェルはホラー枠なんだなってしみじみ。
ふふ……。あああああ無理!! 冷静さを欠けます。ふふっ……ああああもうほんと無理。なんなんですかね、ほんと。感情の整理が追い付かない。
なまねこ様!! ミシェルを描いてくださり、ありがとうございます!!
【Lost in Blue】←リンク貼ってありますので、よかったらどうぞ。流血と暴力表現多用しています